～銀婚を迎えた夏～ ㉑
なぜ？どうして？
「音楽研究会KKの録音を聴く」という流れが、
ここまで私を「つらい気分」にさせてしまう。
それについて、「なぜ？どうして？」という言葉が、
浮かんだり沈んだりする。
昨日から今日にかけて私は、
ネットカフェで だらだらと寝たり起きたりを繰り返しながら、
川辺にたたずみながら、
「今は、急がなくていいはず、急がない方がいいはず」だと思い至った。
たぶんそれは正しくて、
今も、つきつめて考えない方が良いのだろう、と、
うすぼんやり、思った。
自覚
でも、「KKの録音」を聴くのは、これまでに何度もあったこと。
そのとき、私はこの「つらい気分」を
自覚すらしていなかった。
「自覚した分、マシなのかな」と思えてきた。
そう思ったら、少しだけ、ラクな気分になった。
これについて（も？）、
そのうち、その奥行きが見えたり、
また しばらく見えないままだったりするのだろう。
「急がなくていいはず」と
再度、自分に言い聞かせ、
一気に眠気を覚え、寝入ってしまった。
自分との同行
翌朝、
（昨晩ベッドに入り込んだ時よりは）悪くない気分で目覚めた。
これまでの私は、「つらい気持ち」があること自体に、
気づかないように自分を仕向けていたのだろうと、
何度も思い直したつもり。
そう気づいていながら、別なものが現れると、
混乱してしまう現実がある。
今後また 新たなものにさらされると、
その都度、違う種類の不安が立ち上がるんだろう。
でも今は、自分の中にある「つらい気持ち」を
否定しない それだけで 上出来なんだと
自分に念押しした。
これからも、いくつもの「つらい気持ち」の内訳（？）が
自分の中に見えて来るだろう。
それらを否定せず、
休んだり、
引き出しに収めたり、
（当座）逃げれるものは逃げたりして、
やりすごしていこう。
そうやって ゆるり、
自分の気持ちとの同行を許してやろう。
メレンゲの泡
階下から、健一の鼻歌が聴こえる。
健一は、（飲酒時以外は）いわゆるショートスリーパーらしく、
4〜5時間も眠れば十分らしい。
昨晩も、私より遅く寝床に入り、私より早く起きたようだ。
リビングに行くと、昨日の跳ばしっぱなしだったメレンゲの泡が
きちんと拭き取られ、
その周辺もキレイになっている
（ナゾのお掃除グッズを使ったらしい）。
私の表情に気づいた健一は、
「おうちにつくまでが遠足だからな」と明るく笑った。
つられて私も笑った。
KK練習の録音を聴くという流れで自分の中に湧きあがった不快感の自覚を、
健一に告げることもなく、
また一日が始まった。
いしむら蒼
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