~銀婚を迎えた夏~ ㉔

音楽研究会KK

事実上、「健一ファンの集い」と思われる「音楽研究会KK」。

夫、木戸健一のイニシャルを、そのままくっつけた団体名だ。

 

もうちょっと別の名前はないの?と、よく言われたものだが、

代案が出るも絞りきれないまま、30年近く経ってしまった。

 

もう今となっては、この秘密結社のような名前も

そこそこ周知の流れに乗ってしまっていた。

 

 

練習場所である教会へ行くと、すでに、健一の友人の「智之」と、

その妻「恵梨」が到着していた。

 

創成期

この「音楽研究会KK」は、智之と健一の二人が先立ちとなった団体だ。

二人の声がけにより同好の士が集まり、器楽声楽のアンサンブルを楽しむこと数回、

そのうち健一が「第三土曜日3時のお茶の時間に音楽を味わい合おう」と発言。

 

事実上、健一ファンの集まりだったため、

智之が「木戸健一の集い」として団体を作ろうと言い出した。

 

そして名前のままよりも、と、「音楽研究会KK」を仮称とし、

そのまま現在に至る。

 

そして、智之が代表、健一が音楽監督に就任し、

団体としての活動が始まった。

 

上意下達と徒弟制度ギライ

健一には、こだわりがあった。

 

それは、組織にありがちな「上意下達」、

そしてクラシック音楽界にありがちな「徒弟制度」から決別したいといいうもの(とはいえ、最近の健一には その勢いは あまり見えなくなったが)。

 

だから、自分たちが立ち上げた団体では、

それら旧態依然となりがちな流れを作らず、

自分が理想とする音楽団体にしていこうと、折に触れ智之と話していたことを覚えている。

 

元々、健一を中心とした音楽団体を作りたいと願っていた智之は、

健一の主張に呼応しつつ、

自身の思いを具体化したようだ。

 

健一の音楽づくり

健一は特に声楽について突出した魅力を味わわせてくれるが、

それのみならず、表現指導、演奏効果をより高めるノウハウにも長けていた。

 

器楽については、学校の部活動で練習を重ねたものがベースであるが、

一音一音の生かし方は、聴く者に訴える力があった。

 

曲全体についての譜面の読み込みが深く、

表現したい内容について口を開けば、時間を忘れて熱く語っていた。

 

強弱、緩急、それらを計画的に、

また、演奏中の現状によっては大胆に流れを変えて、新鮮な表現を主導した。

 

演奏発表場面において、演奏者・聴衆には、いわゆる玄人も、そしてクラシック音楽に馴染みのない者もいたが、

それら全体に、奥行き深い豊かな味わいを届けていたと思う。

 

 

いしむら蒼

 

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