~銀婚を迎えた夏~ ㊲

意味のない「会議」

私の同意を得るための「会議」について、

以前から私は 冷ややかな見方をしてる。

 

そして今回、なにか妙に落ち着いたままだ。

 

いきなり海外、いきなり半年、

たしかに急展開なので驚きはしたが、

半年の不在に対して寂しいだとかの感情は湧いてこない。

 

基本、何をするにしても、

そもそも 事前に相談しない健一だ。

 

そして私はこれまで、

よほどの不都合がない限り、健一に合わせてきた。

 

私の快諾

映像資料(困りごとの提示から思い切った解決策の紹介、輝く未来につながる…みたいな、テレビの健康食品の宣伝のような内容)

の周辺機器を撤収している健一は、

生き生きしている。

 

その様子を見て、

「どうせ あなたは」という言葉が浮かんだ。

 

でも、言う気には 全くならない。

 

私の快諾を得たと、目の前で高揚しまくりの健一に言ったところで

何の意味もない。

 

「KK」定例の練習日

音楽研究会「KK」については、

「ここしばらく これという発表行事もないし、

定例の練習日を食事会にしたらどうかな」と健一。

 

「練習を進める人が不在なんだから、

そうするしかないんじゃない?」と私が言ったら、

 

健一は

「いや。」

といって、

あごに手を当てて、何かがひらめいた様子を見せた。

 

私はとっさに、

片付け中のお盆を配膳台にタンっと置いた。

 

勢いで端にあった金属ボウルが落下し、

床で「クワンクワン」と回った。

 

回り続けたボウル

駒がよく回るときのように、

回転しやすいバランスで床に当たったのだろう、

やけに長い間、

そのボウルは回り続けた。

 

「ゴワンッヌっ」と間抜けな音をたてて、

ボウルが止まった。

 

健一は吹き出してしまった。

 

 

私も笑ったが、

自分の口の端に妙な感覚が残った。

 

リモート参加の食事会

健一が

「12時に昼食会だったら、あっちは朝の4時かな。

陽が昇るのが早そうだし、思いっきり早起きして『KK』の食事会にリモート参加するとするか!」と言った。

 

私は、

「(ひいきの店のメニューを)美味しく食べているところを、見せつけてあげる」

と言い、

出発前に食べ納めに行こうと提案した。

 

健一も乗り気で、

しばし、地元老舗の「ふわとろオムライス」の魅力を語り合った。

 

健一と一緒に食事会

健一は、

「KK」の相方である智之に連絡を入れた。

 

その後、グループチャットにて

一気に「KK」メンバーに広がった。

 

海外出張、半年の不在について驚かれつつも、

「健一らしい」と、いつもの落としどころに収まっている。

 

この半年間は、

音楽練習は休止して食事会にする流れで進んでいる。

 

なかには練習の休止を残念がる声もあったが、

「健一がリモート参加の食事会」に興味が集まり、結論に至った。

 

「健一不在のまま 音楽練習をしない」、

その結論を見届けて私は、

チャットの閲覧をやめた。

 

いしむら蒼

 

サイコパスの妻 1-㊳ 健一の出立