~晩夏 サヴァン ~ ⑧
全く健一らしい…
健一が北欧へ行ってから ひと月ほど経った8月中旬、
「音楽研究会KK」仲間との昼食会が開かれた。
健一がリモート参加という流れだったが、
本人の寝坊により、
終わり際10分のみの参加になった。
寝ぐせ全開のまま(貸し切り部屋設置の)大画面に現れ、
タイムラグを ものともせず現地の歌を歌い上げたり、
異国暮らしの「驚きネタ」を披露したかと思いきや、
いきなりの通信不具合?で、
ぶっつり切れて終わってしまった。
始まり方も内容も、そして終わり方も 全く健一らしく、
大爆笑にて終了。
健一による盛り上がり
これまで何度も開かれた KK仲間の宴会などでは、
健一の近くに席を取りたがる人が 多かったと思う。
健一が場を大いに盛り上げるからだ。
一時的に健一が不在になったりすると、
勢いを欠いた感じになったものだ。
若かった頃は 宴会じたいがバカ騒ぎにもなりがちな分、
その落差は大きかった。
でも最近は、健一不在の場面もまた、
居心地の良い雰囲気が醸し出されるように なっていた。
「家族予備軍」
特に古参のKK仲間とは、
会合時に限らず、
日常においても気を遣わずに やりとりできている。
作りすぎたおかずをシェアし合ったり、
音楽鑑賞や地域行事に同行したりなど。
特に、健一が海外に行ってからは、
頻度も増え、
私にとっては これまでよりさらに「身内感」が感じられて
嬉しいこの頃だ。
「“家族予備軍”だと思って(頼ってね)」と
言ってくれた恵梨
(健一の腹心の友ともいえる智之の妻であり、健一の後輩)や、
真央(健一の幼馴染)ら とは、
これからも ずっと家族ぐるみで付き合っていける、
そう、自然に思える。
音楽練習を介する仲間として 始まったつながりだが、
それぞれの「家族」を さらに大きく くくった
「大家族」のように 思えるのだ。
別な流れの友人・知人に話すと、
「珍しい」とか、「羨ましい」とか
言われたものだ。
健一が、強い特徴を持つ人間であっても、
恵梨、智之、真央は それぞれに 優しく温かく、
彼ら彼女らの人柄のおかげで、成り立ち、
継続しているものが あると思う。
30年近くも、ずっと同じ味わいを 保てているのだから。
いしむら蒼







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