~銀婚を迎えた夏~ ㉖
様々な演奏形態
「音楽研究会KK」創立当初は、
吹奏楽部出身のメンバーが手持ちの楽器を持ちより、器楽アンサンブルを楽しんだり、
健一や智之が所持しているリコーダーで合奏したりなど、
器楽合奏を楽しむ場面も多かった。
健一が声楽に長けているため、
健一の歌の伴奏として器楽演奏することもあったし、
声楽のみで合わせ合うこともあった。
その日、たまたま居合わせたメンバーでやれることをやる
といった姿勢だったため、
器楽声楽混在、演奏形態も様々だった。
私に編曲のスキルがあったため、
居合わせたメンバーが演奏や譜読みに不安があっても、
部分的に参加できる音列を提案した。
ハンドクラップやボカリーズなどで、
曲の導入部分や盛り上がり部分、終止部分で参加してもらうのだ。
声楽中心へ
創立時から続いているメンバーは6人で、
その他のメンバーは仕事の都合などで入れ替わりがあり、
吹奏楽経験者の比率が少なくなってからは、
声楽中心の活動になった。
その頃から、地域の音楽行事で発表するなどの機会も増え、
健一個人のソロ活動とあいまって、
ゆくゆく、規模の大きな催し物に招かれることにもつながっていった。
6人のうちわけ
創立当時からの6人とは、
私と健一、智之恵梨夫婦、
そして、健一の幼馴染の真央とその夫だ。
真央の夫は智之の知人でもある。
仕事柄参加頻度は少なく、
譜読みも苦手なため遠慮がちではあるが、
細く長く活動に関わっている。
この3組の夫婦の子どもらは年齢も近く、
学校への入学や卒業、受験などの節目を報告し合ったものだ。
子どもらが小さかった頃には、
練習会場で子ども同士顔を合わせ、
しばしば保育所状態になっていた。
この6人とは音楽練習以外の場面でも家族ぐるみの交流があり、
それぞれの家族を拡大して つながり合った大規模家族のようにも思える。
慶事を喜び合い
不幸があれば寄り添い、
多くの思い出を共有してきた、大切な仲間だ。
魅力発見大会
健一の幼馴染である真央は、
特有の声質を持っている。
大陸にルーツがあるからか、
日本人にはあまり例がない「コントラアルト」という声域だ。
通常のアルト声域よりも、
1オクターブ低い音程まで出すことができる。
本人は、自分の話し声が女性の中で低めなことを自覚していたが、
歌唱経験が少なかったため、
KK練習で音源と共に歌ってみて初めてそれを自覚した。
居合わせたメンバーも大いに驚き、
稀有の能力発掘に大盛り上がりになった。
特に健一は、自宅に引き返してまでして追加の楽譜を持ち込み、
あれもこれもと歌わせて、
その日は真央の魅力発見大会になった。
本人は(あまりの主役扱いに)ひたすら恐縮していた。
低く落ち着いた声質だが、
人柄はシャイで、軽いノリで話せる親しみやすいひとだ。
アルト担当
その当時私は、学生時代の部活動や大学の声楽授業での流れから、
声楽の練習ではアルトを担当していた。
智之の妻である恵梨、真央と共に。
自分は高い声を出すのは不向きだと思っていた。
「KK」でのソプラノの担当は数名いたが、
長続きせず、入れ替わりが多かった。
そうこうするうちに、声楽での発表機会が増え、
ソプラノ担当者の補充に苦慮するようになった。
いつまでも臨時調達のソプラノでは
練習上の不都合が出てきた。
そこで、恵梨の後押しもあって、
私がソプラノを担当してみることになった。
いしむら蒼
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