「まわる指」を得た!でも…

一読アリガト

難所を弾ききりたい

いつも、タッチを強くする練習をした。

そして年を重ねるうちに、練習曲の難易度が上がった。

 

すると、難しい部分では鍵盤の底まで弾ききれずに、次の音に移行することに なってしまった。

だから、まずは そこを改善すべし、と 思うようになった。

 

いつしか、達成したい目標は、鍵盤の底をさらうように弾いたうえで 難所を弾ききることに切り替わっていった。

 

まわる指

 

高校2年の冬、ひとつの到達を得た。

 

ある日、練習の終わり頃に 難曲を軽々弾ける運指に至った。

翌日の練習開始時は、その運指能力は まだ眠っていたが、前日より早いタイミングで、

その「難曲を軽々弾ける運指(以降、「まわる指」と呼称)」を得た。

 

数日のうちに、徐々に、練習中に「まわる指」を得るタイミングは早まった。

1週間ほど経つ頃には、練習開始時、指くぐりスケールでウォーミングアップ実施後、「まわる指」で弾ける境地に至った。

夜よりも朝イチのほうが、進歩を実感しやすかった気がする。

 

歌えないけど「まわる指」

ツェルニー50番や、 ベートーヴェンソナタOp.2No.2をサクサク弾けた。

スタッカート12度以上の跳躍も、ストレスなく弾ききれた。

 

難曲を弾ききれる運指を得て、狂喜した(家族に報告しても あまり共感してもらえなかったが)。

 

でも、歌い込んで弾こうとすると、途端に指は動かなくなった。

それでも、弾ききれること自体が嬉しく

音楽表現としての味わいは二の次のまま、「まわる指」を思う存分、堪能した!

 

突然の指の不調

ところが、それを味わい始めて2週間かそこら経った頃、突然、指先の不調に見舞われた。

 

からっ風が強い北国の冬。

低温と乾燥のせいで、指先が深く割れた。

 

かつて、切り傷があっても(気にしないだとか、その指だけ使わないとかで)練習可能だったが

このクレバスのような指先割れはとても深く、軽い衝撃でも悲鳴が出る程 痛かった。

絆創膏を貼っても、汗と指の動きに対応できず、すぐに剥がれてしまう。

指を鍵盤に当てること自体がつらく、すくみ上がるような感覚に襲われた。

 

しかも5指のうち、いきなり3指が割れていて、他の2指も徐々に痛みが出始めた。

 

 

 

泣いた。

 

練習を休まざるを えなくなった…。

 

「歌うシワシワ指」が できるまで④