深い指割れに泣き、高校卒業へ
深く割れる指
刃物等による切り傷とは違い、傷の内部にも細かい傷があるような印象だった。
うっかりどこかに軽くぶつけても、跳び上がるほど痛い。
外からのダメージというより、指の内部に裂ける原因があるようで、奥の方から痛みがくる。
その割れめは深く、まるで雪壁にできるクレバスのよう。
ちなみに、この深い指先割れは、大学進学後は(冬を迎えても)一気に収まった。
転居先は 緯度がさほど変わらない地だったが、気候は大違いだった。
気候の穏やかさに救われ、また、新たな対処方法を得て、大学時代以降の冬を乗り越えることができた。
(ちなみに、対処術の最終版は、“令和”になってから得たのでした。)
練習を再開するも…
突然の指割れに泣いた高2の冬。
少し治ったと思われる頃 練習を再開したが、すぐに指が割れてしまった。
大きな進歩を実感した直後のことだけに、大きなショックを受けた。
泣く泣く、ひと月近く練習を休んだ。
気候が穏やかになった春、練習を再開した。
もう指は割れなかったが、手に残っていたのは すくみ上がるような感覚だけだった。
でも、少しずつタッチを強めにして練習してみた。
が、その後、一週間経っても ひと月経っても、何か月経っても、「まわる指」を復活させることができなかった。
自分の指を何度も見た。
「あの運指能力を忘れてしまった?」と、何度も問いかけた。
狂喜しながら弾いた記憶にはあるのに、指がまわらない、動いてくれない。
何度も泣いた。
結局、「かつて その運指能力を得た」という喜びを 他者と ろくに共有しないまま、
そして「まわる指」の復活を得ないまま、高校を卒業した。
「まわる指と「うたう指」
大学に進学した。
「まわる指」は、とうに「指が忘れて」しまっていたが、それを復活させて そのうえ 歌えるようになりたい。
自分の中では 難曲を軽々弾ける「まわる指」を得てから、その次に「うたう指」を得るのが目標であると認識していた。
でも、その2段階のうち前段である「まわる指」すら 失ってしまった。
最終目標である「うたう指」の実現例は 自分の知る範囲では見当たらず、
「そもそも人間ワザじゃ無理なのかな」と思った。
“歌うシワシワ指が できるまで④「深い指割れ」” への1件のフィードバック